「北の街」(青森市タウン誌)2018年 7月号 表紙




表紙あとがき

クリームソーダ。
どぎつい緑で色づけされた飲み物になぜこうも惹かれるだろう。

海に浮かぶお月様のようなバニラの丘、八十年代ポップを思わせるビビッドなチェリー。
脚付きガラスに盛られた構図の美しさ。名は、英雄ジークフリートの妻を彷彿とさせる。
大人がクリームソーダなんて食べるのは恥ずかしいのだと、二十歳の時、最後のクリームソーダを決め込んで食べた。
しかし、決意と相反し、現代の大人は臆せず、子どもの領域であったはずのパフェもクリームソーダも自由に食べていいらしい。
自分ルールに縛られたわたしの愚かさよ。
いや、それ以前に、今のわたしは冷えた胃腸がなにより怖い。
「ホットコーヒーを」。
憧れだけが過ぎていく、喫茶店にて。