「北の街」(青森市タウン誌)2017年 8月号 表紙


表紙あとがき

海を知らぬ少女の前に 麦藁帽のわれは両手をひろげていたり―――寺山修司
「海を知らない」とはどういうことだろう。
果ての無い青を、肌に張り付く白砂を、三半規管を揺らす波音を、あの解放感を知らないとは、一体どういう感じなのだろう。
この少女は、単に海が遠いところに住んでいるというだけだろうか、それとも。
それとも、と考えてみる。
この少女は、かつて閉鎖的だった自分ではなかろうか、と仮定すると、「麦藁帽のわれ」は世界を知り、「もう大丈夫、さあおいで」と言っている時を経た自分ではないか。
読み解きの角度を変えると、ものすごく優しい存在になる。
調子の良い解釈かもしれないが、誰もが「海を知る少女」になれると信じている。